つまり、金融庁は、金融機関が何をすべきかということに関して、商品から出発して考えるのではなく、お客様の生活から出発して考えることを徹底して求めています。どうしたら金融商品を売ることができるか、どのような金融商品なら売れるか、住宅ローンか投資信託かという問い方は、発想そのものがおかしいということです。顧客の視点に立てば、絶対にそういう発想は生まれないはずです。顧客のライフサイクル全体を考えて、どういうサービスが提供されるべきかと問わなければなりません。極端に言えば、金融サービスそのものが提供される必要がないお客様がいるかもしれません。
むしろ、顧客の合理的行動を促し、いわば顧客を賢くすることのほうに持続可能性があるのではないか、これが金融庁の提示した顧客本位という仮説なのです。
森本紀行他「フィデューシャリー・デューティー・ワークショップ」